山梨県法人会連合会の税制委員会において、各単位会からの提言事項をもとに、全法連に提出する提言文書が作成されました。
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一般社団法人山梨県法人会連合会
平成27年度税制改正に関する提言
景気はアベノミクスにより表面的には回復傾向にあると言われているが、円安による燃料や原材料費のコストの上昇、工場の事業閉鎖などの影響を受け、中小企業が太宗を占める地方経済を取り巻く状況は依然として厳しい環境下におかれている。
当会では税制改正に関する提言について、本年度も昨年に引き続き「税制改正に関するアンケート調査」を県下4単位会において実施し、前年実績より多い610社から要望意見をいただいた。会員企業の要望を踏まえ次のような提言を要望する。
法人税制
1.法人実効税率の引き下げ
近年欧州諸国やアジアの近隣諸国は法人実効税率を引き下げ、25%台あるいはそれ以下の国が多い。
一方、我が国の法人実効税率は復興特別法人税を1年前倒し廃止したものの35%台と主要国の中ではまだ高い。海外から日本への直接投資を増やすためには法人税率を引き下げることが必須であり、多くのグローバル企業は日本をアジアの近隣諸国と比較しながら立地選択をしている。
企業活動を活性化することなく、経済の活力を維持することは難しい。このような観点から法人実効税率を25%台に引き下げること。また、減税財源は法人の課税ベースの拡大ばかりでなく、税制全体の中でカバーするべきである。
2.中小法人の軽減税率について
中小法人の軽減税率は昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている。中小企業の活性化の観点から適用所得金額を2,000万円程度に引き上げること。
3.交際費課税について
交際費の損金不算入制度は交際費の冗費的支出の抑制を図ることが目的とされているが、社会通念上避けがたい慶弔費は交際費課税の対象から除外すること。
4.固定資産の取得価額(土地とともに取得した建物等の取得費)について
地方都市の中心商店街は車社会による駐車場問題、郊外型ショッピングモールの出店攻勢やインターネット取引の進展等の影響を受け空洞化が進んでいる。また、不動産取引の低迷、構築物の老朽化に伴い、幽霊ビル化に拍車が掛かり活性への険しさが増している。
現行の法人税制では土地とともに取得した建物等を取得後おおむね1年以内に取り壊して土地を利用する場合、取り壊し費用は土地の取得価額に算入することになっている。
地方の活性化のために取り壊し費用を資産計上ではなく経費として認めること。
所得税制
配偶者控除の見直しについて
現行の配偶者控除制度は配偶者の年収が103万円以下の場合、扶養家族を持つ社員には家族手当を支給する企業も多いことから103万円を超えない範囲で勤務時間を調整する者が多いため、配偶者(多くは女性)の就労機会を逸している現実がある。
配偶者(女性)の就労機会を高める観点から配偶者控除が適用される収入金額を年収103万円から130万円程度に引き上げることを求める。
事業承継税制
土地・建物及び未上場株の相続の非課税について
未上場株の相続を非課税とすることにより、事業承継も承継しやすい。さらに土地と建物が相続時に非課税となれば経済の活性化につながると考える。
このような観点から事業用資産の土地・建物及び未上場株の相続税を非課税とすること。
消費税制
1.税率10%への引き上げについて
アベノミクス効果により、景気は回復傾向にあると言われているが、地域経済及び消費者の実感は乏しい。平成27年10月の10%への引き上げについては、本年4月の増税後の経済や消費動向にどのような影響を及したのかしっかり見極め、年末までに決断するとされているが、増税後半年程では見極めが早すぎる。また引き上げる時は併せて行財政改革の具体的な方向性を国民に示したうえで引き上げに踏み切ること。
2.軽減税率について
税率10%時に低所得者対策として軽減税率の導入が検討されているが、導入された場合、高額所得者との間に負担感の差異を生ずることとなり、税収の目減りのほか社会保障と税の一体改革の手直しも予想され、社会保障が手薄になれば低所得者への対策が弱まりかねない。また適用する商品やサービスの線引きも難しく、更にインボイス方式が導入された場合、事業者の事務負担が大きいことから、現行の単一税率を維持し、低所得者対策は簡素な給付措置で対応することが望ましい。消費税の増税は社会保障を安定させつつ財政再建を進めるための一歩である。
環境税について
環境税(地球温暖化対策税)は消費税増税と同様に本年4月に年400円から800円へ増税になった。現行法では2016年(平成28年)4月に再び増税となり、家計の負担は年1,200円になり、消費税増税で負担感が高まっている家計にとって決して少ない負担とは言えない。
地球温暖化を食い止め、環境技術の向上につながるのなら国民の理解は得られるが、環境税収入のエネルギー特別会計の「グリーンニューディール基金」は会計検査院から一部で使途が適切でないとの指摘もある。加えてエネルギー特別会計には1,800億円を超える剰余金があると言われている。このため国民が納得する税の使途に限定するとともに2016年度予定の再増税は実施しないこと。
地方税制
1.外形標準課税について
法人税改革に伴う課税ベース拡大に向けた地方法人課税の見直しの中で外形標準課税の対象拡大も論議されているが、企業から「賃金への課税となるため雇用にマイナス」「中小企業への負担増は厳しい」などの意見が多い。また回復基調にある経済状況にも水をささないよう慎重に検討すること。
2.固定資産税の見直しについて
固定資産税は地価の長期的な下落にも関わらず負担感が高いとの声が多い。宅地の評価については、実勢価格に配慮した評価、居住用家屋の評価は築後経過年数に応じた評価方法にするなど抜本的に見直すこと。
3.償却資産に対する固定資産税の見直しについて
償却資産に対する固定資産税は中小企業にも課税されているが、中小企業の設備投資を促進するために、現行の免税点の課税標準額の合計額150万円を300万円に引き上げること。
その他
1.行財政改革の徹底
社会保障制度の安定化、財政健全化を目的に消費税増税が実施され、更に平成27年10月には再増税が予定されているが、消費税増税に国民の理解を得るために行った国会議員歳費の20%削減は本年4月で打ち切られた。国会議員の歳費削減をはじめ、進まない国会議員定数削減や地方議会のスリム化、納税者視点に立ったチェック機能の確立等「身を切る改革」は掛け声倒れの様相である。更に毎年会計検査院から指摘されている「税の無駄使い」も一向に改善されていない。再増税の前に徹底した行財政改革を断行すること。
2.社会保障制度のあり方
高齢化社会の急進展により、今後の社会保障給付は急速な増大が見込まれる。財源を公費負担に頼ることになれば、消費税をいくら増税しても追いつかない。
喫緊の課題として給付の重点化・効率化による抑制と同時に公費以外の公平で適正な負担の確保が極めて重要であり、高所得者の年金給付の削減、医療分野での診療報酬体系の見直しや介護保険給付のあり方等抜本的な改革が必要である。
3.共通番号制度の実施について
共通番号制度は平成28年1月より運用が開始され、当面は利用範囲を社会保障・税・防災分野に限定されているが、制度の効率性、透明性を高め、国民にとっても利便性が高く公平・公正な制度であることから、既に使われている各種の番号を統一し、さらに金融・医療等を含め幅広く活用ができる制度にすべきである。
実施に当たっては個人情報の管理・保護の徹底に努め、制度の適切な運用を担保する措置を講じること。